一般的に前立腺マッサージ器具は「エネマグラ」の名で知られていますが、正規品は「アネロス」という名称です。

エネマグラはなぜ「アネロス」の名称で呼ばれるようになったのか。ネーミングを巡る複雑な歴史をわかりやすく解説します。

日本にはかつて２つのエネマグラが存在した

ときは、1996年。

アメリカの泌尿器医ジロー・タカシマなる日系人が、前立腺の治療を一人でできる画期的な器具を開発しました。

翌年、タカシマ氏はこの器具を普及するべくHigh Island Health（HIH）社を設立し、製造・販売に着手します。

その際、この器具には『Pro-State』（プロステート。日本語に訳すと『前立腺』）なる名称がつけられました。

そして、 1999年。

日本の医薬品会社「有限会社光漢堂」がHIH社と代理店契約を結び、日本国内で輸入販売を開始。

その際、有限会社光漢堂は「エネマ（浣腸）」と「バイアグラ」を掛け合わせて『エネマグラ』という造語を商品名につけました。

つまり、エネマグラは日本発祥のネーミングなのです。

その後、HIH社は光漢堂との契約を解除することになり、新たにパインズインターナショナル株式会社（以後、バインズ）と代理店契約。パインズがHIH社製エネマグラを販売するようになりました。

しかし、ここで問題が起きます。契約を解除された光漢堂が独自にオリジナルのエネマグラを開発、販売を始めたのです。

これにより、日本国内に「HIH社製」と「光漢堂製」という２種類のエネマグラが出回る事態となってしまいました。

本命の「アネロス」誕生

2002年、HIH社がブランド戦略の一環として自社製『Pro-State』を『Aneros（アネロス）』という名称に変更します。

蒼井マリ

アネロスの由来は英語で解剖学を意味するANATOMYの“AN”、ギリシャ神話に登場する恋と性愛を司る神「エロース」を組み合わせた造語だとか

その後「エネマグラ」の名称使用について、光漢堂とバインズの間で長らく裁判が行われました。

そして2011年、遂に事態は決着します。「エネマグラの名称を普及させたのは光漢堂であり、『エネマグラ』は光漢堂の登録商標。よって、パインズは使用できない」という判決が下されたのでした。

これにより翌年、国内で販売されていたHIH社製エネマグラの名称も「アネロス」に統一されることとなりました。

しかし、エネマグラの名称があまりにポピュラーになったため、前立腺マッサージ器具は今も「エネマグラ」の俗称で呼ばれています。

現在のエネマグラはすべて「類似品」

現在、アダルトショップを始め、アマゾンジャパンのような大手通販会社でも『エネマグラ』の名称は前立腺マッサージ器具のカテゴリー名として使用されているのが現状です

これには、エネマグラという名称の方が日本では一般的に認知されていて馴染み深いという理由があるようです。

しかし、厳密には「正規品」はアネロスだけであり、現在「エネマグラ」の名で市場に出回っている商品はアネロスをモチーフにした類似品ということになります。

ちなみに、アネロスの国内販売元・アネロスジャパンの公式ホームページによれば、アネロスには＜正規素材＞として米国FDA承認の医療用プラスチックや医療用シリコンが使用されているとか。

そのため、アネロスのドライオーガズム達成率は類似品よりも格段に優れているそうです。

実際、マニアの間でも正規品アネロスの方が「バリ」がないため使いやすく、ドライオーガズムを得やすいと評判のようです。

日本国内におけるアネロス歴史年表

おまけとしてアネロスジャパン社の公式ホームページから本家アネロスの歴史を抜粋しておきますので、ご参考にどうぞ。