少し前(2021年9月2日)の話になりますが「日刊SPA!」で、現役で風俗嬢として働きながらYouTuberとしてもご活躍するまりてんさんのインタビューを読みました。
出典:現役風俗嬢がYouTuberになった理由「楽しんでいる人もいることを知ってほしかった-日刊SPA!
【インタビュー記事はこちら】
「人間くさい業界に救われた」新興宗教家庭に育った女性が風俗嬢になったワケ(日刊SPA!)
現役風俗嬢がYouTuberになった理由「楽しんでいる人もいることを知ってほしかった(日刊SPA!)
いやー、面白かった! と同時に、いろいろ考えさせられました。
インタビューからは、彼女が心の底から風俗のお仕事を楽しんでいることが強く伝わってきました。
YouTube「ホンクレch――本指になってくれますか?」を始めたのも「風俗の業界を楽しんでいる女の子もいるんだよ」と皆に知ってほしかったからだとか。実際、彼女のチャンネルを視聴すると本当に楽しそうです。
今回のコラムは、まりてんさんのお話を読んで思ったことを語ります。ちょっとマジメな内容になります(普段は不真面目な内容ってわけじゃありませんよ、念のため)。
風俗業界に入って人間くささに「救われた」
まりてんさんが風俗業界に入ったのは、幼少時代の家庭環境の影響が大きかったそうです。
母親がある新興宗教にハマったせいで小3の頃から抑圧された生活を送っていたという彼女。大学に入って一人暮らしを始めたのをきっかけに、その反動で手当たり次第に男性と関係を持つようになり「だったら仕事にしてもおんなじ」と風俗の世界に飛び込んだのだとか。
――私が記事の中で特に感銘を受けたのは、彼女が語ったこんな言葉でした。
「良くも悪くも人間くさい業界(筆者註:風俗業界のこと)に、私自身が救われた部分があって……」
風俗で救われた、とはどういうことでしょうか。
まりてんさんは現役キャストとして今も風俗店で働いていますが「エロが好き、とかよりも、ピロートークが好きなんです」とおっしゃっています。
風俗ってハダカ同士のお付き合いなので、男性の本音がポロッと出ちゃったりしますよね。つい弱音を吐いてしまったり、愚痴を言ってしまったりとか。そんなドロッとした人間くさい風俗の世界に、まりてんさんは居心地の良さを感じるのだそうです。
お客様も、基本的には、性的なサービスを受けにきているのですが、本当に解消してほしい部分って、必ずしも性欲とは限らないんですよ。特に定期的に通われる常連の方は、心に何かを抱えているケースがある。私は、そこをどう紐解いていくかを目指しているんですよね。
こんなふうに堂々と語れるのって、ホントに素敵なことだと思います。
少女時代は周囲の大人たち(宗教関係者)にうわべだけの美しい世界を信じ込まされる毎日に疑問を抱いていたという彼女。だからこそ人間の本質を理解できて、お客様をより深く癒してあげられるんでしょうね。
風俗で楽しく働くための取り組みとは
インタビューを読んで、まりてんさんって「真のセックスワーカー」だなと私は強く感じました。
セックスワーカーというのは、ざっくり言うと「自分自身の行為・外見・イメージなどを、他人の性的欲望の対象として売ることを仕事としている人」です。
セックスワーカーの健康と安全のために活動するグループ「SWASH(Sex Work And Sexual Health)」が編んだ書籍『セックスワーク・スタディーズ』(日本評論社、2018)は、セックスワークをこのように定義しています。
奴隷や人身売買や結婚というシステムに含まれる売春と、仕事としての売春をはっきり区別しようという、働く側の意識から生まれた言葉が『セックスワーク』だ
そう、風俗って「お仕事」なんですよ。
「そんなの当たり前じゃん!」って言われるかもしれませんが、だからこそ、まりてんさんのように“楽しみながら仕事する”という発想が大事なんだと思います。
とは言え、風俗のお仕事に、まだまだ偏見が多いのも事実。
風俗への偏見は(残念ながら)これから先も完全になくすことはたぶんできないでしょう。だって、小中学生の将来なりたい職業ナンバー1が「風俗嬢」になるとか、おそらくあり得ないじゃないですか。もしもそうなったら、私だって「おいおい、日本大丈夫か?」と思います(そういえば「キャバ嬢」が1位だった時代もありましたが)。
でも、でもです!
そうした偏見は完全になくすことはできないとしても、できる限り減らしていかなくてはなりません。風俗嬢だって、生身の人間なんですから。
まりてんさんは現在、風俗嬢のスキルアップのための講習会を開いたり、風俗で働く人のお悩み相談を請け負ったり、ということもおこなっているそうです。
こうした取り組みは、風俗にかかわる人たちの意識をきっといい方向に変えていくことでしょう。そうすれば、風俗のお仕事を楽しめる女の子がもっと増えるはずです。そして、(まりてんさん自身がそうであったように)風俗に救われる女の子たちが増えていくに違いないと期待しています。
風俗業界全体としてもさまざまな取り組みが行われています。
例えば、上述したSWASH(スウォッシュ)はその例ですが、他にも風俗嬢が無料生活・法律相談を受けられる「風テラス」のような団体もあります。また、売れっ子風俗嬢が得た報酬を、貧困風俗嬢支援に充てる活動をおこなっているセックスワーカー基金「レッドアンブレラファンド」などもその一例でしょう。
まとめ
最後にひと言。
私としては、風俗業界が変わるには社会が変わらなくてはダメだとも思っています。
日本はジェンダー意識が低いとよく言われますよね。実際、男性が女性を見下したり、モノ扱いしたりする傾向が昔からあります。
風俗でも、女の子に対してお客様がそういう態度をとってしまうのも、男女差別の意識がまだまだ根強いからなのでは――というのが私の個人的な意見です。風俗業界を良くしていくためには、お客様の意識が変わることも必要ではないでしょうか。
ちなみに、シンデレラFCグループも風俗業界を少しでも良くしていくように色々なことに取り組んでいます。
風俗にかかわる一員として、「わたでき」を通じて女の子に役立つ情報を発信していきたい!とインタビューを読んで改めて誓った私、蒼井マリでした。
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